所詮犯罪と言っても軽犯罪しか起こした事がない者達だ。手に人を殺せる道具を持ちながらも、使う事に恐怖を覚えていた。
だから警備兵に見つかった時も、咄嗟に動けなかった。
仲間が殺されて、初めて数にまかせ人を殺した。
その後はもう、統制などありはしなかった。
「ザムス!」
「ゼンガか! 俺はここだ!!」
警備兵の銃が火を吹く中、飛び道具を持たないザムス達は進退極まっていた。目の前でなす術がなく仲間が殺されていく。
見た事もない地獄だった。
だが、彼らが選んだ道でもあるのだ。そして引き返せない道である。
「一か八か突っ込むか?」
無駄死にだろうと言う言葉をゼンガは飲み込む。だが止まった所で何も変わらないのだ。だが、同意しようかと言う時銃撃が止んだ。
別ルートの仲間達が警備兵を背後から襲ったのだ。
所々で仲間達が銃を奪い始めていた。監視員と言う名の警備兵達は、ゼンガ達が何も出来るはずがないと高をくくっているところがある。それがゼンガ達にとって幸いした。
「おーいザムス! 生きてるか!?」
「オードルか!」
警備兵から奪った銃を手にオッドル達がやって来る。
「ブランはどうした? 一緒だったんじゃないのか?」
「ブランは・・・・・・死んだよ。蜂の巣だった」
「!」
ゼンガ達が息をのむ。やはりより親しい人間の死は重い。
「悲しんでる間があったら行くんだよ! ブランが報われないだろう!!」
「ああ。ああ、そうだ。行こう、オードル。ゼンガ!」
ザムスの言葉に、再びゼンガ達は走り出した。
一人、二人と仲間は減っていく。それでも急襲は隙を突く事が出来た。
目の前にシャトルがあるのだ。
「くそ、ここからじゃ動かせない」
大型船の方には見向きもせず、オートで動かせる小型の緊急艇に狙いを絞っていたのだが、ロックがかかっていた。
「コントロール室で解除出来るぞ」
多少は機械に心得のある仲間が備え付けの端末から情報を引き出す。
「俺が行って来る」
「ゼンガ!」
ゼンガは元来た道を引き返し、先程端末で見たコントロール室へと向かう。その時後ろから銃撃の音が響いてきた。
慌てて振り返るが何かに引火したのか視界が煙でふさがれる。今は戻るよりはコントロール室だろうと、それを振り切り走り続けた。
しかし轟音がゼンガの動きを妨げる。別の仲間がどこかで火薬に火を付けたのか。それともただの偶発か。
何とかコントロール室にたどり着いた時には炎がゼンガ達の周りを焼いていた。
部屋には先客がいた。ゼンガは目を見開く。
「・・・・・・マリト?」
そこにいたのはマリトだった。
(2013.7.9)