オールドタウンの反乱 11

「それなら今すぐ帰って、ぎりぎりまでゼンガさんのそばにいたらどう? 気に食わない僕の所にいるよりよっぽどいいと思うけど。明日の朝までしかゼンガさんはいないんだよ」
「知らない、知らないそんなこと。なんでお前が知っててオレ達は知らなくて。訳分かんねーよ」
「だったらそれをゼンガさんの前で言えばいい。息子なんだから遠慮することないんだよ」
「な、なんだよいきなり」
「親が目の前にいるうちに、後悔はしないように」
「マリト?」



 その夜は静かに更けていった。ただ違うのは日が沈まず、人口の暗闇だったが。




 男達が集まっていた。
 女も多少いるが、圧倒的に少ない。
 その中心にはザムス、その横にゼンガがいた。
 その顔は他の者達とは違い、多少暗く沈んでいる。妻との別れは済ませたが、結局あれから息子のケイニーが帰ってくることはなかったのだ。
「ゼンガ」
「なんだ?」
「実は、ひょっとしたらお前は来ないんじゃないかと思っていた」
「そんなわけないだろう」
「そうだな、ありがとう」
 そうだ、ゼンガはザムスと約束した。家族よりザムスを選んだのだ。

 集まった者の手には農具、武器となる物はこれしかなかった。
 世界は宇宙での生活すら可能にさせた技術を持っているというのに、なんという時代錯誤な武器か。
「わかっていたとはいえ、昔の一揆みたいだな」
「仕方ないだろう、他にないんだから」
 あちらこちらで低い笑い声が響いた。
 これから起こすことへの精一杯の強がりだったのだろう。


 間もなく決行の時はやってくる。


 警備兵以外には開けられない扉が開く。
 マリトが動いたのだ。別行動のため共に集まることはなかったが、うまくやってくれたのだ。
 中に足を踏み入れても警報装置はならない。

 ここからはひたすらシャトルを目指すだけだ。
 鍬や鋤、鎌を持った者達が足を殺して進み始めた。

(2013.6.12)