『アルカの苦悩』
目にしてしまったから気になる。
視界に入れないようにしているのに、端にとらえてしまう。
あの時、忘れようもない光景を見てしまったからだ。
だから、な・・・・・・なぜ父さんは背中にまわされた手に気づかないんだ!!
結局いつもの通りポーカーフェイスが崩れ、口の端が引き攣り出したアルカはエスナの所へと逃げ込んだ。
『メーネは知っていた』
マイン「だー! やめろっつてんだろ」
アルセン「お前こそ、その言葉づかいやめたらどうだ? 若い子も見ているかもしれないだろ」
メーネ「ごめん、見てるのわたしだわ」
マイン「!!!!(なんでここに)」
メーネ「だって座談会だもん、座談会は生きてても死んでても関係ないのよ」
アルセン「・・・・・・本当か?」
天の声『・・・・・・ノーコメント』
マイン「と、とりあえず助かった。メーネ、こいつを何とかしてくれ」
メーネ「どうして?」
マイン「どうしてって・・・・・・」
メーネ「わたしはカケに負けたしね、口出しはできないよ」
アルセン(誰かさっきの声につっこまないのか)
マイン「そ・・・・・・そんな」
メーネ「てっきりアルセンは私似の女になるかと思ったんだけど、全然変わんないよね」
アルセン「俺は女になっていいと言っているんだがな」
メーネ「マイン、あなたひょっとして・・・・・・」
マイン「メーネ! 何を考えてる。俺は女が好きだぞ! 女が好きだーー!!」
メーネ「そんなに力強く叫ばれても引くんだけど」
アルセン「男でも引くな」
マイン「シクシクシク」
メーネ「でもあれだけ一緒にいてアルセンの事気付かなかったなんてどうかと思うけど」
アルセン「だろう?」
マイン「な、何だよその目は!二人揃っていじめやが・・・・・・ちょっと待て。
メーネ、お前知ってたのか?」
メーネ「当然でしょ、アルセンがマインを好きだって知らなかったらそもそもカケは成立しないし」
マイン「ひ~~~~」(頭を抱えて混乱しだした)
メーネ「鈍感というより・・・・・・ガキ?」
アルセン「五十前になるのに」
メーネ「それでも好きなんでしょ」
アルセン「お前だってそうだろ」
メーネ「そ、ふふふ」
アルセン「ははは」
マイン「ひ~~~~」
『グリスとロウドの関係の秘密』
ロウド「で、結局没になった俺達の話って何なんだ?」
天の声『教えてほしいか?』
ロウド「うわぁ! またお前か」
天の声『いいのか? そんな口をきいて。私はお前達の創造主だからな、お前の聞きたがってる話も私の手の内。
気になるでしょう? どんな話か」
ロウド「・・・・・・そんなに出し惜しみするような話なのか?」
天の声『ふっ! 自分の内側をよ~くのぞいてご覧。
私は最初巷に溢れているBL小説の王道を行こうとしてたんだよ』
ロウド「巷って・・・・・・ん? 俺の内側? 王道・・・・・・」
天の声『あんたの性格は変えてないんだよ。ロウド、あなたは表向きは友情を装っても・・・・・・ゴニョゴニョゴニョ』
ロウド「・・・・・・ふんふん、・・・・・・ん!! わああぁぁぁぁぁぁぁ!!」
天の声『ほーっほっほっほっほ』
ロウド「おま、まさかそれをグリスに言ったのか!!」
天の声『へっへっへ』
ロウド「こ、殺してやる。殺してやる貴様!!」
天の声『本当の事言っただけで何が悪い』
ロウド「うるさい、黙れ! 今すぐに実体を表せ!!」
天の声『ふ、さらばだ!!』
ロウド「ち、消えやがった。・・・・・・は! グリスの誤解を解きに行かないと」
ロウドは走り去った。
天の声『行ったか。え? 王道って何と?
ふふふ、なぜか巷のBL小説は主人公の周りもくっつく確率が高いってやつさ♪』
『アルカの苦悩 その2』
父と母は仲が良かった。
それはもう息子の俺や妹のジエンの前でも遠慮することなくキスする事もざらだった。
でもそれは日常の一部と化していたし、今だから言うが決してそれを見るのが嫌ではなかった。
だが、父と母なら良くても父と母以外なら別だ。
いや、母が亡くなった今、父と母以外の女ならまだ百歩譲って容認してもいい。
頼むから・・・・・・男は、男だけはやめてくれ。
アルセンに半分からかわれながら口づけされている父親のマインを目にした息子は、他に誰も来ないだろうかという不安からその場を立ち去れず苦悩し続けた。
『女アルセン』
日に焼けた肌、精悍な顔。
鏡に映る自分とそれほど変わる所がない海の男。
異氏の一族だが、今まで惚れた相手は全て女だった。
よりによってこんな相手に惚れるとは。
だが好きになってしまったものは仕方ない。
「は? なんて言った?」
告白の内容が理解できなかったのか、男は身動きすらせず問い返す。
「好きだ、俺を女にしてくれ」
「お前、そのナリでそっちだったのか」
明らかに嫌悪の目で自分を見る。
今の自分は相手と同じく日に焼けた褐色の肌、背は若干劣るが相手を上回るほどの筋肉と体格を持っていた。
「俺は、異氏の一族だ」
「・・・・・・なるほど、で俺に惚れたと」
状況を理解したのか、相手が平常心を取り戻す。
「悪いが他を当たってくれ、異氏の一族だったら愛されたい奴なんぞごまんといるだろ」
「俺はお前が好きだと言ったんだ」
「情熱的だな、どう聞いても男を口説いてるようには聞こえないが」
「俺は子供の頃を除いて女になった事がない、今まで愛した者は全て女だった」
アルセンも自分の気持ちに戸惑っていた、だがどうしても思いは止められないのだ。
「だが・・・・・・止まらない」
「・・・・・・分かった。
だが今すぐ返事は出来ない、もし早く返事が欲しいなら」
「・・・・・・」
「俺をその気にさせてみろ」
それでこそ俺が惚れた男だとアルセンは拳を握りしめる。 そして男二人の密かな駆け引きが展開される。
このあたりにアルセンがマインと再び出会う前に一緒に旅をしていた女との短編の拍手があるのですが、外しています。携帯版には残しています。
女アルセンは次の「誰だ?」に続きます。(アップが前後しています、すみません)しかし今読み返すとなんて恥ずかしい内容なのか(笑)
何だか座談会ネタが多いですね。携帯サイトでこれを載せていた頃、15000hit記念でグリスとロウドの話の前フリをしていたので、ちょっと唐突な内容になっています。
(2011.12.4)