一生懸命勉強して入った高校。
どうしても入りたくて入った高校。
だから友達と別れても平気だった。
勉強して勉強して、私の望みどおりの学生生活。
でも時々、ほんの少しだけ淋しさが襲ってくる。
自分で選んだ道だから、だからそんな事で悩みたくない。
悩みたくないのに、ままならない感情。
親に心配かけたくないから、私は校舎の影に隠れる。
ほんの少しだけ、弱さを吐き出す。
何度目の時だろう? 私にそっとハンカチが差し出されたのは。
誰かに見られていたんだ。
恥ずかしさあまり逃げ出したくなったが、親切な行為を拒否することもできずお礼を言って受け取ろうとした。
やっと相手を見ると、私は息を飲んだ。
勉強第一の私でも知っている大坂先輩。
私達下級生の間で騒がれている先輩。
私はどうしたらいいのか分からなくなった。
私自身が憧れていた訳じゃないけど、間近で見ると一般的な美的感覚を持っていたので胸が高鳴る。
確か彼女はいなくて、でも周りにはいつも友達が囲んでいて、私達一年は誰も先輩の声を聞いたことがなかった。
「あ、あの。ありがとうございます」
顔が赤くなるのを抑えきれなかった。
ハンカチを受け取った時にふれた指、なんてきれいな手なんだろう。
その様子に先輩は美しい笑みを浮かべて口を開いた。
私はドキドキして、初めて聞く先輩の声に耳を澄ました。
「気にせんでええよ」
「・・・・・・え?」
私は耳を疑った。
「君、いつもここで泣いとったやろ? 何か悩み事でもあるん?」
ギャップ。
その言葉がこれほど強烈に感じられた日はなかった。
顔は先程と変わらず美しいのに、口から出る言葉だけが別世界。
「どうしたんや? あぁ、ここで泣いとったんは誰にも言わへんし心配せんでええで」
「・・・・・・」
硬直した私に先輩は気付き、美しい手を口元にやり苦笑した。
「あ、ひょっとして俺がしゃべってるとこ聞くん初めてやった?
自分がこのしゃべりかたやから何も思わへんねんけど、周りはびっくりすんねんな、なんでやろ?」
それは顔と言葉使いが合ってないからです。
私は悟った。
これほどかっこいい先輩に彼女がいない理由。
それは私と同じ状態に陥ったのだ。
先輩の周りには友達が多い理由。
それは恋愛感情抜きなら友達にするのにこれほど面白い人もいないからだ。
「な、なんででしょうねぇ」
私は先輩に感謝した。
とりあえず淋しさと涙は吹き飛んだのだから。
ビバ関西弁。
そして私は数ヶ月後先輩と付き合いだしたのですが、その時先輩は泣いて喜んでいました。
理由は先輩が関西から引っ越してから、私が初めての彼女だったからだそうです。
-完-
FNに入会した時に、とにかく何かを書こうと一時間くらいで考えながら書いた作品です。
ベースにはマンガのネタがありますが、関西弁ってどうして文章にするとギャグのようになるのか?と思い書いた小説です。
マンガの方はもうちょっと恋愛物ですね。
確か16ページくらいで描いていた記憶があります。
大坂先輩(←すでにネタ)の話し方は私そのまんまです。
さすがに「俺」とか「君」とは呼びかけないですが、他はほんまにまんまです。
なので、関西弁に含むところはありませんのであしからず。
(2009.6.4)