二人でいるのに、一人旅のような日々。
ただただ体力を奪うためのような毎日は、マインに燃えさかる故郷からの死への歩みを思い出させた。
だけど今は違う、ツガートがいる。一人ではないんだ。もう呼びかけても返事をしてくれなくなったけど、一人じゃない。
それがどれだけマインにとって必要なことだったか。
ツガートがそばに存在するという、それだけでマインはどんな事にも耐えられた。
初めて手を上げられた日からどれほど経っただろうか?
殴られるだけではなく、首を絞められたり、時々とはいえ剣を向けられた事もある。
それでも死ぬギリギリの所でツガートは正気に戻る。
いつの間にか、それは二人の習慣になってしまい、気がつくと慣れてしまっていた。
ツガートの狂気は昼夜問わず襲ってくるため、マインは寝ている間も身構える癖がついていた。無防備な時に首を絞められるとさすがに身に危険を覚えるからだ。
当然安眠できるはずもないが、ツガートの方も同じだった。
それがさらに二人の体力の消耗を消費させていた。
だんだん衰えていく体力の中、それでも男の狂気は収まらない。
しかし先に行きどころのない苛立ちが来て、その後に同情が来るので最悪の事態は避けられていたのだ。
逆であったなら、ツガートを止めるものはなかっただろう。
目的もなしに、ただ歩みを続ける二人。もはや休むことの方が多かった。
マインとツガートが出会ってからどれくらい経っただろうか?
長い間に思えるが、本当は数か月にしかすぎない。
あの優しく楽しかった時間は、ほんの少しなのだ。
だがマインの拠り所はそこしかなかった。
心身共に衰弱しきった少年に、他にどうしろというのか。
お腹が空いたと思った。
何日食べていないだろうか? 少し離れたところでツガートも休んでいる。何日も食べずに歩き続けたのだ。体力も限界だろう。
何か食べるものを。
このままじゃツガートが死んでしまう。
そんなのは絶対嫌だ。
マインはゆっくりと立ち上がり、何か食べられる物を探しに行こうとした。
(2011.12.27)