高校に入ってから遊ぶ事を覚えた。
別に今まで友達がいなかったわけでもなく、薬物に手を出したわけでもない。
まあ人並みに夜遊びを覚えたという、人によっては今更と言われそうな事だが。
十時、ただ何をするでもなく、公園にチャリで乗り込みブランコの周りでくだらない話をする。
何となく若者が遊んでるという事を自分がしているという現実に、それだけで満足して楽しいと錯覚させられた。
別に無理やり外にいるわけでもない。
中学高校と上がるに連れ、急に窮屈に感じた家よりかは、くだらない話をする友達の方が何倍もましだと感じるようになったからだ。
それにこのグループは別に不良でも何でもない。
タバコを吸うわけでもなく酒を飲むわけでもなく、ただコンビニで買ったジュースを片手に何時間も粘るだけの、ちょっと大人の階段登ってみましたというグループだ。
俺自身も煙草に手を出すような奴とはお近づきになりたくないから、この程度のグループがちょうどいい。
くだらない話のレベルも低すぎるわけではないし、俺もくだらないという事を忘れて話に夢中になる時もあった。
高校の友達は一生の友達になる。
昔親に言われた事が脳裏をよぎったが、特別信じられる根拠は見当たらなかった。
こいつらはそうなのか? 少なくとも今はみんな俺の事を友達だと思っているし、俺もそう思っている。
しかし「今」と言う言葉が入るのだ。
この大人になりかけている中途半端な時を一緒に過ごすということは、それだけで一種のまとまり感を互いに与える。
自分はこんな風に夜に出かけることなんてしないと思っていた。
だから今こうしている瞬間が幻の様で、しかし幼い頃の高校生とはこういうものだろうと言う事を実行していることに逆に現実味を覚える。
要するにそれなりに満たされて、それなりに普通にやっているのだ。
十一時、最後はゲームの話だった。
俺も人並にゲームはするし、好きな方だと思う。
このグループはどこのクラスの女子がかわいいとか言う事はあまり言わない。
俺がこの友達の良いところを挙げるなら、その事を上位に上げる。
誰かと付き合ったことなんてないし、自分が誰かと付き合うという事が想像できないのだ。
変な意味でなく、男同士でいる方が楽しかった。
十一時を回るという事は、解散の時期が近づいてきたという事。
このあたりに小心者さが出ている。
でもそれでいい、これ以上遅くなると明日起きるのが辛くなるから。
こんな生活はごくごく一般の生活だと思う。
俺は特別変わった所はないし、勉強も運動も普通。
平均で言うならどちらも少し上という、学生生活的に面倒くさくなはないが特に秀でている所もない辺りにいる。
誰かをいじめたこともなければ、いじめられた事もない。
目立つ事は嫌いだが、注目されるのが嫌いなわけでもない。
誰だって自分の存在を改めて認識してくれるのは、一種の快感だと思う。
ただこんなに普通なのに、この先は不安だ。
まだ一年の終わり、高校生活は後二年ある。
就職はしないだろうし、きっと進学するんだろう。
学力が平均的というのは、下手に進む道が広くて悩む。
俺は何がしたいんだろうな?
そんな不安は、夜あのグループといる時にだけ紛らわすことができる。
だから学生は意味もなく群れるのが好きなのだ。
他に俺を安心させる要素は、こうやって夜遊んでいるという事に、世間一般の当たり前の高校生に当てはまっているなと思い込める事くらいか。
周りは俺より出来るように見えた。
別に学力云々の話じゃない。
先を見据えてそれを目指している。
それは俺をたまらなく不安にさせる。
置いていかれるようで、そいつを引きずり降ろしたくなる。
だが、出る言葉は「がんばれよ」だった。
友達は俺を良い奴だと言う。
俺と友達になれて良かったと言う。
そんなこと言われたら、良い奴でいたくなるじゃないか。
そこに一種の俺の存在感を見い出せるじゃないか。
だから友達は必要だった。
自分の存在場所を見い出すために必要だった。
時々そんなことを考えてしまう自分が、本当はとても醜いんじゃないかと思うが、更にそんなことを考えている自分に「馬鹿じゃないのか」と考えを振り払う。
アンバランスだった。
自分では立て直せないバランスだった。
でも高校生活は楽しかった。
小学校よりも中学よりも高校は毎日通いたいと思った。
勉強よりも友達に会う事の方が重要だったが、学校に行くという事は必然的に勉強するという事だから、先生にも特に問題のない生徒だと思われていたはず。
俺の友達には一人目立つ子がいたから、俺なんか影に隠れていると思っていた。
後々その目立つ子と一緒にいる大人しい子という事で覚えられていた事を知るのだが。
だから高校生活は楽しかった、先の不安さえなければこれほど楽しい時もなかったかもしれない。
やがて受験を控えた面々は夜集まることもなくなる。
もちろん学校で会えば、いつも通りのくだらない話。
未来が見えない俺は一人取り残されているようだった。
やがてみんな目指す目標へと進んでいく。
俺も何もしないわけにはいかなかった。
『なあ、久しぶりに夜に集まろうぜ』
メールが来た。
『今んとこ、俺と佐川と明石と前田と・・・・・・』
懐かしい面々の名前が書かれている。
あの時のメンバーそのままだ。
俺もその中に含まれている。
何と嬉しいことだろう。
高校という一瞬の閉鎖空間の中だから築かれたと思っていた関係、その空間から解き放たれた今でも、俺達の関係は変わらなかった。
『お前も来るよな?
って言うか強制連行』
ー完ー
少し自虐的になっていたときに書いた小説です。
誤字脱字以外はその時のまま何も書き直ししていません。今は自虐的な気分ではないので、この時の様に書けないからです。
ついでに内容もかなり恥ずかしいです。こういう小説は珍しいです。
ちなみに実話ではありません。多少は自分をモデルにしてますが、高校卒業までは夜に遊びに行った事もない面白くない真面目学生でした。
本当は自虐的だった時の気持ちを投影した話にしようとしたのですが、あまりに意味が分からない小説になったので、別の話で、あまり濃くならずあっさりした感じにしようと思い出来た小説です。
書いた直後はあまりの恥ずかしさに読み返す事も出来なかったのですが、今は自分では少しは言いたい事が書けた小説かな~と思います。
(2010.3.25)